【心揺さぶるストーリー!理学療法士×作家のタナカンによる作品集!】
小説の中では様々な背景や状況、そして異なる世界で生きる人々の物語が織りなされます。その中には、困難に立ち向かいながらも成長し、希望を見出す姿があります。また、人々の絆や優しさに触れ、心温まるエピソードも満載です!
それにしてもこんな、不器用鉄面皮のどこに惹かれたんやろうなぁ。と坪井咲夜は正面で考えをまとめている山吹薫をしげしげと眺める。まぁ。顔は悪くはないんやけどな。と息を吐く。
褥瘡の程度についてだったな。なら一番よく目にするだろうNPUAP分類について説明しようか。これはステージⅠからⅣまで分類されており、米国向けにはさらに二つの追加カテゴリがある。まずステージⅠでは消退しない発赤とされる。圧を抜いても赤みが消えずに、他の皮膚と色が違う。炎症所見や疼痛も伴うことがある。
それが褥瘡のある人である、まず第一歩目だと注意しなければいけないですね。
そこから褥瘡が進行するとステージⅡへと移行するんやな。部分欠損やったっけ?皮下出血を伴わずに光沢や乾燥した浅い潰瘍が出てくる。黄色壊死組織と伴わへん、薄い赤色の潰瘍で表皮の下まで傷害されとる感じ。
咲夜はよく勉強しているねぇ。と上代葉月が目を丸めて静かに言った。ちょうど担当する新しい患者に生じていたのが褥瘡だったから調べただけである。山吹が口を尖らせ。何か言おうとする前に言葉をかぶせる。
そんでさらに進行すると、ステージⅢ! 褥瘡がさらに深くなって皮下脂肪が出てくる。でも骨や筋肉、腱は見えてへん状態。そしていよいよ皮下脂肪の下にある骨や腱、筋肉が見えだしたらステージⅣに分類状はなるんやんね?
そう分類されているな。しかし、ステージⅠ〜Ⅱだからと言って油断はできない。たとえば好発部位の仙骨部やそもそも高度なサルコペニアの進行で筋組織や皮下脂肪が著しく少ない場合には、すぐに骨に達するのは当然だな?
なるほど。確かにそうですね。発赤の状態だからといって油断はしない。形成されているならすぐに進行するリスクがある。もちろん患者様の状態によりますが。
ふむふむ。と上代は感心したように頭を縦へ上下させた。知っているから知らないからといって、大きな関係はないと思う。患者や人の出会いと同じで知り合ったとしたら、深く関わるならば知ることは避けらない。もちろん知りたくはない情報だとしてもである。と坪井は思う。
そして米国向けの追加カテゴリーとして、黄色の壊死組織や黒色の壊死組織が創を包んで十分な広さがわからない場合もある。踵なんて特にそうかもしれないな。これは創の深さがわからないから分類不能とされる。そしてDTI・・・Deep Tissue Injuryと呼ばれる表層ではなく先に深部が傷害されており、発赤に見えていたとしても、実は見えない場所で障害が進んでいる場合もある。
なるほど。なら消退しない発赤の時点で、そのリスクも念頭にまず置いて置く必要がありますね。進行が早いように思います。ねぇ。咲耶は知ってた?
それはまだ・・・勉強中やったよ。
ふん。と山吹が鼻を鳴らすのを見て、やっぱりこいつやいけ好かんと咲耶は眉間を左右で互い違いに歪ませる。何があったか絶対に聞き出す。と鼻息を荒くした。
山吹薫の走り書き 3
・褥瘡の分類はステージⅠからⅣに分かれるが、発赤の時点で油断はしない。
・発赤に見えても内部では障害が高度に進行している場合があることを念頭に置く。
・白波は、傷ついていないだろうか。
【〜目次〜】
『内科で働くセラピストのお話も随分と進んできました。今まで此処でどんなことを学び、どんな事を感じ、そしてどんなお話を紡いできたのか。本編を更に楽しむためにどうぞ。
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